石井輝男追悼特集 @新文芸坐

10/25の文は石井輝男を観るとどうなるかに全く触れてないな。狭い範囲で文字や声で石井輝男の魅力を伝えてきてて、その時に良く使ったキーワードを羅列してみよう。

1) いままで刺激されたことの無い脳の場所を突いてくる
2) 常人の想像力の外側を観たかったら行け
3) 石井輝男に期待する事、それは、複数の原作・アイデアをごちゃ混ぜにしてひとつの映画にブチ込み、最後に常人の脳を破壊するような大技を今回も見れるんじゃないか。作り手が未熟なところを笑う楽しみ方を提供したみうらじゅんの方が面白くなっていて、本編はつまらない「シベ超」のような未熟な映画ではなく、本当に客に笑って楽しんで欲しくて作られている映画が観たいのだ。おれが望むのはそこなのだ。
 
4) 『タランティーノに影響を与えた』これは言った事ないけど、そう言っておきゃ済まされる便利な言葉。事実そうだろうし。

石井輝男の言葉を借りれば、石井監督あの才能は一種の奇形だ。(「直撃地獄拳 大逆転」より)
 
観た映画は少ないけど、共通して感じるのはおおらかな娯楽性。どんな残酷なをやってても石井ワールドに引き込まれてしまうので楽しげな物に感じてしまう。殺し屋1を観て「ものすごく残酷なドリフ」と誰かがWEBに書いてたけど、石井映画にも当てはまる名言だと思う。

以下はおれが観たい、または、観た事があって面白いから観てくださいリストです。
 
11/4(金)
観てください
「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」(1973) jmdb 10:40/14:00/17:20/20:40(終映22:05)
 何の必然性も無く女が裸になる映画で、タイトルから感じるほど恐ろしげな内容ではない。オープニングタイトルから主人公がもうおっぱい(OP)振り回しているそのシーンは18歳の時らしい。陽ギャグ「裸と裸のおつきあい」、陰ギャグ「女の情け」。おれのリビドーとしては洋尼風の女(石井映画には珍しいスレンダー)にももっとOP見せてもらいたかった。
 精神病院の患者として暗黒舞踏な人が出てきてますキチガイと言ったら暗黒舞踏という差別的な感性が大好きだ。そしてこの精神病院のシーンでは江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間jmdbのあの子守唄がバックに流れるのだ。精神病院や暗黒舞踏、オープニングタイトルの必然性の無いおっぱいは黒沢清映画のバスや椅子のような効果(その監督ワールドへの「はいここでスイッチ入りましたよ」って合図みたいなもの)があるのか。例えが弱いぞ>>俺。
 ちなみにOPとは東京ファンタ石井輝男追悼集会(映画秘宝ナイト)で柳下さんが使っていた(ように聞こえた)言葉。
 
11/5(土)
観てください
「ポルノ時代劇 忘八武士道」(1973) jmdb 11:25/15:25/18:50

 死に装束をまとった長髪の丹波哲郎扮する明日死能のニヒルなキャラが良い。かなりまともでカッコ良い劇画映画。
 ひし美ゆり子jmdbがやばい、エロい、日本人離れした魅力がある。この映画も全裸の女がいっぱい出てきて、いっぱい死にます。手とか足とか生首が画面を飛び交えば人が死んだと言う合図、分かり易い!! (ジャン・レノとかもあのような勢いで死ぬんだったらもっと好きになれるんだが、カッコつけやがって)、スタッフが投げ入れている所を想像すると楽しくてしょうがない。
 忘八とは、里美八犬伝の八つ戒めみたいなものを全部否定している事で、それはこの@偏愛キネマ館に詳しく載っている。この他にも漢字を使ったを独創的エピソードがあり、細かいところまで気を遣う監督のいいところが出ている。
 
観てください
「直撃地獄拳 大逆転」(1974) jmdb 9:45/13:45/17:10/20:35 (終映22:00)
 13:05より、リリー・フランキー(「盲獣VS一寸法師」主演)、杉作J太郎トークショーあり
 千葉真一の登場シチュエーションを当てられたらあなたはキチガイです。今回のラインナップのうち最大の馬鹿映画。
 網走番外地の鬼寅こと嵐寛寿郎(アラカン)がゲスト出演している。「忘八武士道」丹波哲郎扮する明日死能も「地獄」にゲスト出演したり、自作の別のキャラクターが他の映画に出てきたり、奇形人間のように複数のエピソードを混ぜ合わせたり、好き勝手ながらも知っている人にはうれしい演出をするあたりが晩年カルトキングと呼ばれる理由の一つに違いない。この映画にはそういう映画ファンに訴える遊びが詰まっている。
 
11/6(日) 〜土方巽DAY〜
観たい
「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図(1969・東映) jmdb 11:30/15:10/18:50
観たい
「明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史」(1969・東映) jmdb 9:45/13:25/17:05/20:45(終映22:15)
 小平義雄事件や高橋お伝が題材になってて、本物の阿部定も登場する性犯罪のオムニバス映画。この2作品には土方巽が登場してる、あのシチュエーション以外に彼が演じるのは何なのか知りたい。
 
11/10(木) 〜つげDAY (杉作J太郎DAY)〜
「無頼平野」(1995) jmdb 11:30/3:10/6:50
観たい
ねじ式(1998) jmdb 9:50/13:30/17:10/20:50(終映22:15)
 つげ義春の傑作。実は観たことが無い。両方に杉作J太郎登場、しかも濡れ場。
 
11/11(金)
観たい
「地獄」(1999) jmdb 11:30/15:10/18:50
 法で裁けぬあいつやあいつを地獄で裁くぞ。
「盲獣VS一寸法師(2001/ビデオプロジェクター上映)[遺作] jmdb 9:45/13:25/17:05/20:45(終映22:20)
 狂った紙芝居の絵をバックに悲鳴をつないで音楽にしたような、かなり使えるオープニングタイトルをもう一度観たい。盲獣役の平山久能jmdbが暗黒オーラをばら撒いている、しゃべり方もいい。
 
 
ラインナップに無くて観たい映画は、「女王蜂の怒りjmdbと「暴力戦士jmdbだ。まだ観てない石井映画のうち特に評価が高いものだ。詳細不明。理由はWEBで調べる事に期待が無いからだ。石井輝男の映画はどんな内容であっても良いと思ってるし、映画館で初めて知りたいと思っている 。だから俺の一行コメントなんてうんこみたいなモノは俺のポリシーとしては要らないのだが、40作品近くあるとどこにポイントを絞っていいのか分からないだろうから、おれのちんけな体験からポイントをここに記すものである。
 
 
(何の必然性も無く)おっぱいがいっぱい出てきて、どんどん死んだりする。今日的な裸の女が出てくる映画って知らないのでおれの知識では比較する能力はないけど、どのおっぱい(ってーか裸)もどっしりとした身体の女性が多いです。でもそれがだんだん良くなってくる、エロ目的ってわけなの?エロくないだろ。エロくないけどなんか嬉しくなってしまう。平和が一番ですよ、作ってる現場は戦争かも知んないけど、いっぱい馬鹿で狂ったな映画を作ってくれてありがとう石井輝男監督。
 
 
最後に、石井輝男の映画を見るとどうなるか。おれの感想としては、他の映画が観れなくなる事だ。こんな感覚を人生で3度味わった1999年「DEAD OR ALIVE-犯罪者」、2000年「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」、2003「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」。俺人生ベスト映画は他にランキングがあるが、この三作品だけは他の映画を観ようかとする行為にまで影響を及ぼす破壊的な面白さがある、こんな物凄い映画見せられちまったらしばらくは他の映画なんか見る気にならなくなってしまう。