佐藤肇「怪談せむし男」

たぶんニュープリント、画質はきれい。
 
西村晃演じるせむし男が色々嫌がらせしてくるヘルハウスものだった。時代を先取りし過ぎたらしい不世出の怪作。
せむしである必要が無く、気持ち悪いから出してるという悪趣味演出に徹底しているような映画なので、必然性の有る無しを語る行為が無意味。
そもそも監督の佐藤肇(はじめ)という人がめちゃくちゃな人で、自作の代表作は「ゴケミドロ」だけど、人生ベストが「市民ケーン」とか言ってるわけが解らない人なのだ。
 
しかし、決める所は決める監督のようで、構図やカメラワークが光っていた。
天井裏から覗いた俯瞰図を混ぜたり、カメラが斜めってたり。
振り返ると居る弁護士とか、せむしの初登場の瞬間などギョッさせる素早い感じが印象的。
 
かと思えば、ラストシーンで謎の声「ジェーン」に呼ばれて屋敷の庭をゆったり歩き続けるところなんかは「キャリー」っぽいしっとりとした不気味さがある。
 
ちなみにこの謎の声は本当に謎のまま終わる。
さらに、途中で出てくる日本兵も、何で出てきたのかさっぱり解らなく、何度見ても謎は解けないんだろう、でもエグい。見る者に強烈な印象を残したいのであれば、成功している。
 
冒頭の火葬場からタイトルバックに焼けた死体が「ギャー」とか叫ぶのなんて明らかなショッカー演出。
 
ショッカーと言えば、西村晃に向かって「お前はカラスに取り憑かれている」といきなり出てくるシャーマンばばあ(イタコ?)。交霊会を催し、物凄い顔で交霊、参加者のチョンボで発狂、そのあと物凄い顔で死亡という本当にとんでもない奴が闖入してくる。
このシャーマンが絡むシーンは笑ってる客も居たけど、本当にショッキングで素晴らしかった。
 
あと、エロいシーンもちゃっと入ってる。やっぱホラー映画にはエロいシーンは鉄則だと思うのだ。「バタリアン」での墓場のストリップシーンとか最高にバタ臭くて好きだ。
 
こんなタイトルのために封印されてる映画だけど、当時はそこそこ流行ったようで、西村晃でもう一作、という事で姉妹作に「怪談一つ目男」というものがあるらしく、来年やってくれる事を期待してます。
 
見る前に不安だったタイトルだけの映画では無かった。
 
トークで色々気になる情報があったのでメモ。
大林宣彦の「ハウス」をノベライズしたのが佐藤肇とのこと。感動的なエピソードですが、大林宣彦も底知れないじじいだ。