池田茂「かかと」【異常な小説でした】

すごい小説に出くわした。

池田茂という作家の「かかと」という作品である。
 
フランツ・カフカ安部公房のような不条理状況で物語が展開する、のだが、、
そうかと思いきや、驚くほどの省略多用が生み出すスピード感で考える事の無意味さをむき出しにしたままラストを迎える作風はノイズ音楽のライブのようである。
 
なので、カフカ安部公房で感じるほどの暗さや閉塞感は無い。
 
そして笑えるのである。ほんと笑える。
 
独特な特徴もプラスされる。
肉体の一部が単品で登場する異常な作品だ。本作「かかと」では人間の足の「かかと」だけが行動する描写が中心となる。
 
これは、おれの好きな作品である。狂ってて笑えるから。また、想像力の虚を付かれるのも好きだ。
 

肉体への探究心...(なのか?)

作品名を列挙すると気になるのは、作者は肉体への探求欲があるのではないか、ということ。

かかと
オマンコ棒
ソファ脳

視覚的にはどうか。

  • かかと:外から見えるが、あんまり見れるものでもない
  • オマンコ棒:なかなか見えない、というか見せただけで罪になったりする最終兵器 To Herself、しかも棒という付属品の存在が卑猥さと意外性のスパイスを加える、と同時にもう胎内。
  • :見る機会が皆無に等しい。まず外からは見えない。

この、見えないものが作品内で単品で晒されている様に、変態性を感じる。単にモツが好きなだけでは、あんな異常な小説は書けない。
 

おれが今「肉体への探求欲を感じる」とか言ったが、単なる直感なので精度に自信が無い、作者に騙されてる気がする。
でも読んでる時に塚本晋也の映画、特に「ヴィタール」「東京フィスト」に似たものを感じてしまったから「肉体への探究心」と書いた。
でも、きっと作者の意図とは違うんで「胎内回帰のていで」「肉体への探求欲の発露のていで」としておきたい。
 
だとすると、何だ?
単なるスカム的演出として、読者がなるべく不愉快な思いを簡単に得られるように、(やや)気持ちの悪いものを登場させているだけと捉えても良い感じがする。
 
しかし突然アダムス・ファミリーのハンドくんを思い出し「その露悪演出も違う」ということに気付く。
キモ可愛いという印象の方が大きい。作中意思を持って歩きまわる「かかと」はもう既にキャラだ。
なかなか、ゲンキンで、現代的な試みの元スカムな小説を書く人ですね。
 
 
まあ、何でも良い。作者が変態なのは解った
 
 

考えるなんて無駄

最初に書いた「スピード感」を特に感させるのは、ラストのたたみ掛けである。
これは、キモ可愛い登場人物、ならぬ登場人体パーツに次ぐ作者の特徴であり得意技だ。
 
物語の登場人物は、不条理な舞台装置に対して、多少悩んだり、思案したりしてみせる。それに対する何らかの答えが出たりするのか?と、普通の読者は期待する。
しかし、次の展開ではもう既に他の場面に移った後で、さらに新たな出来事が大変な濃度で登場人物を襲い、物語は唐突に終わってしまう場合もある。序・破・急をこんなに正しくやってしまわれた作品に出会うと、人は「これはもう暴力なのか?」とすら思ってしまう。
 
 (もしかしたら、何らかの決着や解決が披露されているかもしれない。おれはバカなので、そういう細かい事は解らない、としておこう)
 
この省略することのスピード感は考える事の無意味さを表現しているかのようだ。
 
しかも笑える。この「笑える」という部分に大きな価値を見出している。
こういう人を食ったような小説は好きである。
池田茂、もっと読みたいなー。
 
 

「かかと」の入手先について

ところで、この作品が何処に売ってるのかというと、「本」には掲載されていない。
とあるコンピレーションCDに掲載されているのだ。

それは「いでよエイフェックス・ツイン」な祈願系ドリルン・クラブイベント MEOW!!! のレギュラーアクターとしても知られる spastic cucumber (痙攣胡瓜) の所属レーベル merry works のコンピCD「Megabugs」に収録されている。いや、朗読じゃなくて、ちゃんとした紙に日本語で印刷されてますよ。
 
この「Megabugs」もまた凄い事になってるCDである、まず値段が1000円である(17アーティストにより17曲も入ってるのに1000円)。値段以外にも色々凄いのだが、それはまた別のハナシという事で。
 
 

merry works 「Megabugs」

アマゾンhttp://www.amazon.co.jp/Megabugs-%E3%82%AA%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%90%E3%82%B9/dp/B0026J8HCQ/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1241276295&sr=8-1
試聴http://www.myspace.com/merryworks
 
他にもタワレコなどで売ってます。
マイスペでは6月3日リリースになってますが、タワーレコード秋葉原店、新宿店、渋谷店、池袋店、柏店、長野店だと5月3日に先行発売です。

おもて
「かかと」をさりげなく告知
うら
感が狂う1000円CD!!!

 
お気付きでしょうか、黒い方が「おもて」らしいです。
 

ちなみに今回のNGワード

 NGワードを晒す事で、関連性を示唆する志の低い試みw

  • 中原昌也:展開に不関連性と意外性を持たせる事で、無意味を繋いで意味を紡ぐみたいな、何か
  • ウィリアム・バロウズの事を説明している文章:文章を破壊する事で、言葉の意味を破壊してから、再構築する事で、既存の価値観からの解放を試みた。という感じの説明。これを、中原昌也がやっているみたいな、意味すら考えることもバカバカしくなるような中に感じるノイズ音楽的なものと絡めてみたかったり、ムリムリ