宝を掘り当てた!!! @鈴木則文

2007/4/21〜5/11 シネマヴェーラ渋谷 鈴木則文特集で掘り当てた宝
 
が付いてるのは一食抜いてでも見にいけ
は印象に残ったカット
 というか普段映画なんかどーでもいいようなONLINEの知り合いが見ても大丈夫そうな映画って事なので覚えておきましょう。
 

徳川セックス禁止令 色情大名」(1972)

 「愛があれば」 by サンドラ
 「速打ちじゃー」 by 殿
 「やらせろー」 by 下賎の民によるやらせろ一揆
 花火ドーン
 菜の花畑で全裸女ふたりがはしゃぎあうシーン。
 この映画の凄いところは真顔でバカな事やってるところで、殿山泰司が脂汗を浮かべて真剣な顔+半ベソで太鼓を叩くシーンとか笑って倒れるかと思った。ちんことまんことセックスの話をしてるけど、撮り方は劇画タッチというアンバランスの極みがえらく面白い。
禁セックスを破って切腹を命じられた女性の切腹シーンが非常にエロかった。
 
 真顔でギャグを言うのは最近だと都知事選挙外山恒一なので各自チェックするように。
 
 

エロ将軍と二十一人の愛妾」(1972)

 エロ将軍がセックスばっかりしてる映画。
 エロコメディーと言うことで「セックス禁止令」と比較してしまうけど、こちらは喜劇俳優(由利徹)の喜劇シーンが用意されていて素直に面白い、と思ったら次のシーン(岡八郎)では色々な方面に危ないギャグをかましまくる。エロ将軍の方がより多く笑ってた気がする。
 大奥のお局様により女中くすぐり拷問とか、ラストの大乱交パーティーとかだんだん頭が痺れてくる。
 あとまあどーでもいーんだけど、おれは地味な田舎娘に妙なエロさを感じてしまう。
 
 

忍者武芸帳 百地三太夫」(1980)

 映画の半分以上を地上で過ごさない真田広之の動きまくりっぷりが凄い。
 海の上、木の上、屋根の上、川の中を飛び回り、果ては空中プランコに空中大回転と忍者なのか雑技団なのか判らなくなって来るがそのサービス精神は素晴らしい。あんまり地面に降りてこないなーと思ってると、地上では謎のパントマイム→ファイアーダンスを披露する真田広之に感動した。これが後のイギリス時代に繋がったのだろう、さすが天才鈴木則文監督。
 ファイアーダンスで感動したは余計だけど、スタント無しで何10メートルも飛び降りてたりするのでスゲーと思った。
 これまたスタント無しで逆さ吊りのメガンテ攻撃を仕掛ける志穂美悦子もスゲー。ダブルヌンチャクやカンフーも難なくこなすバトルヒロイン。
 丹波哲郎の登場で映画に不整脈が出てドキドキした、100メートルぐらいの崖から飛び降りて来たぞあの妖怪ジジイ、ここ必見、どうやって撮ったのか知りたい。
 千葉真一の上に小人が2人乗っかるムカデ戦法はいかにも忍法らしくコミカルで良い。カンフーも出てきたり、他の映画でも感じたけど鈴木則文監督はアクションも軽快で楽しめる。リアリティ追求ではなく、あくまで娯楽要素に焦点を絞ったアクションが追求されている。なおアクション監督は千葉真一(サニ千葉)。
 

まむしの兄弟 恐喝三億円」(1973)

あとで調べて解った事。この作品はシリーズで中島貞夫から始まり山下耕作鈴木則文などの監督が携わっているようだ。
菅原文太の出所で始まり、二人仲良く懲役を食らってエンドというのがお約束らしいので本作のあのオチはかなりの変化球という事になる。以下文字反転[まむし兄弟の殴りこみ→ヤクザ壊滅→お巡りが勝手に内部抗争と処理→懲役は食らわず→兄弟がぼったくりパンパンに再会→路上で行為に及ぼうとしたところを警察に見つかって変態として逮捕→エンド。] カーチェイスの有り得なさが爽快、細かい事にこだわらない素晴らしさを知る。
 

聖獣学園」(1974)

 入るとジュージュー音を出して人間が溶ける風呂とかあって、魔女狩り日課というか趣味の変態処女ババアが集う理想的学園。
 踏絵のシーンが必見。
 この映画を観た者にとっては意外だと思ってしまうが海外での人気が高いらしい。結構キリスト教って嫌われてんのか?しかし海外でもよほどの悪魔崇拝者でもあんな素晴らしく笑えて荘厳な踏絵の発想は浮かばないだろう。
 
 

シルクハットの大親」(1970)

 伝え聞いた作品となんか違うのは俺の記憶違いだったようだ。
 若山富三郎が大砲台を紅白の太い綱で身体に縛り付けて独り殴り込むシーンが死出のお祭り騒ぎを、大砲が一瞬で咲いて散る花火を連想させてかっこよかった。
 
 

★★ドカベン」(1977)

ドカベンが最大のお宝だった!!!!
X-MENウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)並に似ている岩鬼殿馬拓ボン!!! とにかく顔で笑えるのでズルイ。その他にも柔道部のステマル(日本人に見えない)や目無しとか保健室のキチガイ先生(ハンマーかノコギリしか使えない)とか、居るだけで笑えるキャラが多彩で皆に活躍の場面も用意されていて素晴らしく娯楽要素が高い。
 
ラスト泥酔状態で登場して酔っ払ったまま1000本ノックを始める原作者・水島先生、まさにキチガイに刃物、このカットが奇形人間のラスト並の爆発力があり、ここで一線を超えちゃってる人と俳優(常人)の差をはっきりと浮き彫りにしてしまうのだけど、あまりの凄さに我に返る暇も無く笑いっぱなし。
 
山田太郎が机の面積ほどもある弁当を食うシーンがあって、
「ドデカイ弁当を食うからドカベンなのか?」
 と思ったんだけど、セリフを使わないで物事を伝える、映像で語るという表現にえらく感動した。いやほんとだってこれが映像表現の真髄だと思うんだけどな。
 
・ワン・アンド・オンリーな笑い演出があって恐ろしくなった。
『とある人物の病弱な妹の「遺影」』がアップになるシーンがあるのだけど、おれはそこで腹の底から笑ってしまうのだ。遺影で笑うなんて気が変なんじゃないのか?と思われるだろうが、観客一同が笑ってた事でも解る通りちゃんと誰でも笑えるカットとして作られているのだ。
「病弱な妹という無垢でいたいけなものの象徴」が「既に死んでしまった事実を突き付けられる」というシチュエーションをギャグとして決めてしまう天才技が存在する。ここは自分の目で確かめて欲しい。
 
 調べたら奇形人間などの脚本家・掛札昌祐だった。
http://www.jmdb.ne.jp/1977/da001110.htm
 
 井口昇が「ドカベン2」を撮りたがってて岩鬼役はデモ田中。見てえ。デブ村上ってのはたぶん「アトピー刑事」で「セブン」の大食をやってた人か。
http://blog.livedoor.jp/iguchinoboru/archives/50669504.html

 
 
トークより】柳下毅一郎
柳下さんとのトークの際に監督本人ははぐらかしてたけど、どの映画にも社会批判、特に権力への風刺が織り込まれていて厚みが感じられる。政治家を裏で操っているのは金を持ってる商人という構図が多い。
「徳川セックス禁止令」の殿様をやった名和宏さん曰く「監督は照れ屋」だそうだ。監督はノンポリを装っておられた。
次回はあの殿様と大体同じだという「温泉スッポン芸者」の竿師段平というキャラを見てみたい。

ところで唐沢俊一村崎百郎道徳サイト「漏らすわよ! ハニートラップ!」の記事である。要約すると、海上自衛隊の乗組員が中国籍の妻に軍事機密情報を渡した、つまりスパイに国家機密をホイと渡してしまったという事件。その方法は男を誘惑して情報を入手する「ハニートラップ」色仕掛けだというのだ。
これって女に興味が無いまま結婚する年齢にまでなった殿様に、どうにか女に興味を持ってもらおうとあらん限りのエロ接待をしたら骨抜きになってセックス三昧「こんなイイコトは独り占めしてしまおうと」俺以外セックス禁止の悪法を発してしまう「セックス禁止令」と同じ話ではないかい?程よく抜いとかないと。
 
 
トークより】中原昌也青山真治
笑ったやり取り
鈴木則文:「自分は商業映画監督なので客が入ってなんぼだから最近の屁理屈映画はよう解らん」
中原昌也青山真治に向かって「どうですか日本を代表する屁理屈映画監督としては」
青山真治:「はい私が今の日本映画をダメにしてる張本人です」
 * * *
青山真治のディテールへの追求が激しかったけど、作ってる側としては当然の着眼点なのかもしれない。しかし青山真治って芸術映画監督だと思ってたけど娯楽映画も見るんだな、というよりディテールへの記憶力が大きかったのでコイツこんなキャラだったっけとか思ってしまった。いつの間にか坊主だったし。
 
【補足】見れなかった
少林寺拳法」(1975)
「華麗なる追跡」(1975)
コータローまかりとおる!」(1984)
文学賞殺人事件 大いなる助走」(1989)
 
 
【メモ】
あと志穂美悦子、どこで切っていいのか分からず、名前がなかなか覚えられない。ここまで全部が名前みたいな名前は初めて見た。
 
【メモ】
三原葉子は覚えなくてもいいけど、どの映画でもまったく同じ役と同じ演技でいつも処女を奪われるハイミスなのが笑える。「徳川セックス禁止令」で山城新伍に処女奪われた人ね。
 
【メモ】
製作:天尾完次
脚本:掛札昌祐(昌裕)
 
 
濃厚な映画体験をしました。ごちそうさまシネマヴェーラ
 
9月ごろ色々DVDが出るらしい。タイトルは思い出したら書こう。「華麗なる追跡」や「ドカベン」だった気がする。
 
【脳内ポスター】
太鼓ドーン、花火バーン、飛び回る志穂美悦子真田広之、エロ将軍、処女ババアの魔女狩り、ありえないカーチェイス、ありえないアクション、おっぱい、波打ち際の逆さ十字架、ドカベン岩鬼