「大虐殺」

(1960/新東宝/94分/白黒/小森白監督/天知茂:アナーキスト古川/沼田曜一:甘粕大尉)
★後半ネタバレ含みます★
これまたとんでもない映画。こんなに萎えるとは思いもしなかった。
 
カタルシスはオープニングの大虐殺シーケンス、もう色々な方法でぶっ殺して回ります。ほんと☆付き日本軍+憲兵はろくでもない。
甘粕大尉が大杉栄をぶっ殺すところでカタルシス終了。開始20分ぐらい。
この大杉栄が死ぬシーンも酷い。甘粕大尉が張り切り過ぎて取り調べの後のお楽しみの「拷問」シーンが中学生の前戯かってほど短くてすぐにフィニッシュしてしまう。
拷問映画としてはマイナス点である。
だから大虐殺なのかもしれないけど。
フィニッシュがあまりに唐突なので、場面が数10分後の葬式の場面になるまでおれは大杉栄が死んだ事が信じられない。
この直後に妻が殺され、一緒に拘束されていた7歳ぐらい?の子供まで殺されてしまう。
「こわいよーこわいよー」という子供の叫び声が鉄の扉の向こうで消えてゆく場面は容赦ない非業さがあった。
 
大杉栄に対する拷問は省略=見えない演出?で完全に失敗してるけど、こちらの声だけが聞こえてくる見えない演出はすっごい当たってて凶悪過ぎる。この辺りの演出ペース配分が妙なバランスの悪さを感じたけど、時代の違いなのか、こういうのは結構面白い。
 
唐突ですが、この映画はここでフィルムが紛失してたり、燃えてなく無くなれば良かったんだ!!!
だって甘粕先生はもう出てこないし。(出てきても人殺ししません)
そしたら伝説の「大虐殺」映画として歴史に残っただろう。
 
「虐殺」でおっきしてきたバカどもも (ていうかおれ) 、まさかひとりの子供 (映画として脇役以上の自我が与えられている) が丁寧に殺されるシーンで終わるとは思ってないだろう。
 
この後がもうずっと (体感2時間ぐらい) 天知茂田吾作バナシになってしまう。
ただし「噺」以下の与太話ですらなく、信じられない間抜けが出てくる情けない映画に成り下がってしまう。
こう説明すると珍しいし、ひょっとすると一人ぐらいは面白そうと思うかもしれないが、何も起きないから。
 
天知茂と仲間たちは爆弾や鉄砲を入手するけど、全部失敗します。なにひとつ成功せずに映画が終わっちゃう。
 
この企画は右翼が「左翼ってこんなにバカなんですよ」ってプロパガンダしたくて作ったとしか思えない酷い映画でした。
 
いやー、おれは甘粕先生の映画だと思い込んでたので残念でした。
 
以上、下世話な脳無し映画ファンの感想でした。